アサガオを君へ
栄治を見れば冗談を言っているわけじゃないことは分かる。


昔から栄治が嘘をつくときの癖は、無表情なときだ。


無表情で喋るときほど、栄治は嘘をつく。


何故だか私には分からないけど、決まってそうだった。


私が口を開けようとしたとき、チャイムがなった。


それと同時に夏樹が教室に入ってきた。


少し凍ったような空気が私たちの間で流れるなか、他のクラスメイトはそんなの関係なく慌ただしく教室に入ってくる。


栄治は私の手をパッとはなす。


「じゃ、食って感想聞かして。ばいばい」


クルッと踵を返すと、ジッと私たちを見つめている夏樹の横を、まるでそこになにもいないかのように通り過ぎて帰って行った。


夏樹は視線を私に向けたまま。


私も夏樹の視線をに自分の視線を絡めた。


でも夏樹は無言で私から視線をそらすと、自分の席に座った。


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