アサガオを君へ
栄治はそのままクルッと振り返ると言った。


「明日はマフィン作るから、楽しみにしてて



私の返事を聞く前に、スタスタと栄治は教室を出て行った。


しばらくそのまま立っていた私は、力が抜けたように椅子に座る。


誰も信じてくれないって分かってる。


私たちの関係は、はたから見たら恋人同士とかそんなのに見えるんだって理解してる。


そんなんじゃ無い。


私たちは心友なのに。


好きも愛してるの気持ちも、大切に思う気持ちも、恋とは違うのに。


分かってはもらえないし、理解なんてしてくれない。


いいよ。


夏樹だけ、信じてくれれば。


分かってくれれば。理解してくれれば。


そもそも、夏樹以外に理解してもらわなくたっていい。



夏樹さえ…。


それから少しして夏樹は戻ってきた。


相変わらず無表情で、口数少ない夏樹は、自分のカバンを持って私を見た。


きっと私にだけ聞こえてる。


「早く帰ろ」って言葉が。
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