アサガオを君へ
ヨウチンは無表情でまっすぐ歩きながら言った。


「ココはもったいないな」


「何で?」


私はペーパーフラワーに目を落とす。


どうしよう。数個、形が崩れてる。


つくりなおさなきゃ。


そんなことを考えていると生徒会室までついてしまった。


私はヨウチンを振り返る。


それを待っていたかのように、ヨウチンは言った。


無表情で私の顔を見つめながら。


「ココの世界は狭すぎる。夏樹だけしかいないから」


なにそれ。


私も無表情でヨウチンを見つめてしまう。


そしてゆっくり笑みを貼り付けると言った。


「狭くていいの。私と夏樹には、そんなに広い世界はいらないから」


広ければ広いほど、息がしづらい。


ヨウチンは無言でドアを開けた。


私も無言で部屋に入る。


部屋に入る瞬間に見えたヨウチンのいつもの無表情な顔が頭に張り付いた。


そしてヨウチンは私を中に入れると、自分は入らずにガタンッと閉めた。
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