アサガオを君へ
栄治はため息をつく。


「心もいい加減にしろよ。心は心のやりたいようにやればいい。足手まといの兄貴なんかのせいで、自分の道を狭めるな」


「おい、黙れや」


栄治の棘のある言葉を諌めたのは、私ではなく、大阪弁のきつい口調だった。


私は自然と声がもれる。


「アッキー…」


栄治の後ろから、今登校してきたであろうアッキーは恐い顔をして私たちを睨んでいた。


私はとりあえず無言でアッキーを見つめる。


栄治は、訝しげに首をかしげた。


その態度に腹が立ったのか、アッキーは眉を吊り上げる。


「お前が、夏樹の弟か?」


「そうだけど、それが?」


夏樹の弟なのか聞かれたことに、栄治までもが顔をしかめる。


朝から不穏だ。


私は夏樹が消えて行った玄関にチラッと視線を向けた。
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