アサガオを君へ
夏樹の冷たい手。


私の温かい手。


二人でならちょうど良い体温なんだね、きっと。


二人で一つ。


どちらが欠けても、私たちは極端すぎるんだ。


それを私は分かっている。


でも、踏み込めない。


気付かないふり。


一歩進むと、こんなにも幸せなのに。


この幸せを体感しても、きっとこれから先も、私は一人では踏み込めない。


いつの間にか信号は青になっていた。


グッと私をリードするように、夏樹はあの独特なリズムで歩き始めた。


私はいつも夏樹の横で、少しだけ間をあけて歩いていた。


でも、今は二人の距離は無いに等しい。


誰かに見られるかも、とか。


夏樹が変だ、とか。


そんなことは頭の隅に置いて、私は少しだけ頬を染めた。
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