アサガオを君へ
「え?」


ゆっくりと夏樹に視線を戻すと、そこに夏樹はいなかった。


ドクンっと鼓動が駆け上った。


頭では理解しているけど、心では認めたくなくて。


急がなくちゃいけないのに、何故かゆっくりと私は視線を下ろした。


夏樹はどこにも行ってなかった。


私の横にいた。


ただ呼吸が荒くて、地面に倒れこんでいる。


それ以外は何も変わらなかった。


顔も背も、雰囲気でさえも。


私は呆然と立ち尽くして、夏樹のキツく閉じられた目を見つめた。


こっち見て。


え、こっちを見て。


何で目が合わないの。


さっきまであんなに痛いほど、合ったのに。


お願い、私を見て。


お願い、お願い。


目、開けて。


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