アサガオを君へ
私はグッと体に力を入れて、勢いよく立ち上がり一歩を踏み出した。


そしてその瞬間、私は前に転けてしまった。


「っ、いたっ…」


膝に強い痛みを感じたけど、そんなこと関係なかった。


私はバッと後ろを向くと、私の背中から放り出された夏樹が仰向けに横たわっていた。


泣かない。


泣けない。


そう思っていたのに。


涙は出なかったけど、私は泣いた。


夏樹に近寄って。


夏樹の頭を抱きしめて。


私は涙を流さずに泣いた。




何で?



どうして?



何でなの?




そんな思いがグルグルと頭の中を回っている。


そして、その中心には大きく。


恐怖という文字があった。



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