アサガオを君へ
ザバッと立ち上がると若干立ちくらみを起こしたが、目元を押さえて湯船から出た。


濡れたまま脱衣所に出て用意してあったタオルで水滴を拭く。


そしてTシャツと短パンをはいて髪の毛をフェイスタオルでガシガシと拭きながら、暖簾をくぐると、夏樹は先に出て椅子に座っていた。


私が近くまで行くと気付いたらしく、立ち上がって私の正面に立った。


夏樹の真っ黒で一本一本が細い髪の毛から水滴がポタポタと落ちている。


また、ちゃんと拭かずに出てきたな…。


心の中で呆れていると、ズイッと目の前にフルーツ牛乳を突き出された。


「フルーツ牛乳。買ってくれるって言った」


予想外の言動と行動に固まる。


そして何よりキラキラと輝いた目がおかしくて、ブハッと吹き出した。


私はクスクスと笑って、自分の頭にかけていたフェイスタオルを手に取り夏樹の頭にかけて言った。


「買うからちゃんと髪の毛拭きなよ」
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