アサガオを君へ
顔を上げて頬を触ると熱かった。


春休み中に、夏樹が旅行に行っていたから会うことがなくて、結構久しぶりだったからかな。


私は手のひらでパタパタとあおぐ。


ちょうどホームルームが終わり、担任が出て行った瞬間に教室中がにぎわい始めた。


ノンちゃんは私の横の席に座り、バサッと新しい雑誌を広げた。


「買い物行こうよ。行きたいお店ある?」


「んーっと…」


私がパラパラと雑誌をめくると、前の席から女子のキャーキャーと騒ぐ声が聞こえた。


学年で可愛いと人気がある橋本さんの声だ。


彼女の声は甲高くて大きくて、私の大っ嫌いな蝉の鳴き声にそっくりだ。


「宮野くんは、どこで遊んだりするのー?」


無駄に甘ったるい喋り方だ。


別に何を話そうが私に関係はないけど、宮野っという名前に体がピクっと動いた。

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