【短編】僕+初恋=後輩
「ンで、漢字はどう書くんです?」
僕は化学教室の黒板の前に立ち、チョークを持ち、自分の名前を書いた
『石浦憲弍良』
彼女は僕の隣にいつの間にかいた
「『イシウラケン…』」
「やっぱり読めないよな」
当たり前の事なのに、ため息をついてしまった
「名前を聞かなかったら読めません…すみません」
加那汰さんは少し寂しげにポツンと言った
「いや…別に大丈夫だから」
「僕だって『加那汰莉緒』なんてフリガナがなけりゃ読めなかったから」
そう言って、僕は彼女の頭をなでた
理由は解らない
いきなり彼女が可愛くていとおしくなったのだ
髪の毛を縛っているせいか崩したくない
そんな彼女を壊さないように大事に、大事に
そっと髪の流れにそってなでた
「じゃあ…アタシたち、仲間ですね!!」
先程の空気とは打って変わって無邪気な女の子に見えた
でも、少し顔が紅い
彼女は化粧をしている訳ではない
アイシャドウとか言うやつも、マスカラとか言うやつも、グロスと言うやつもなにもかもつけていなかった
そんな素朴な彼女が彼女らしさを更に引き立てた
なぜ顔が紅いか解らない
僕と同類ってのが嬉しいのか?
彼女の紅い笑顔をみて僕の頬も紅く染まって火照るのが解った