【短編】僕+初恋=後輩


「ンで、漢字はどう書くんです?」

僕は化学教室の黒板の前に立ち、チョークを持ち、自分の名前を書いた


『石浦憲弍良』

彼女は僕の隣にいつの間にかいた


「『イシウラケン…』」
「やっぱり読めないよな」

当たり前の事なのに、ため息をついてしまった


「名前を聞かなかったら読めません…すみません」

加那汰さんは少し寂しげにポツンと言った

「いや…別に大丈夫だから」

「僕だって『加那汰莉緒』なんてフリガナがなけりゃ読めなかったから」


そう言って、僕は彼女の頭をなでた

理由は解らない

いきなり彼女が可愛くていとおしくなったのだ

髪の毛を縛っているせいか崩したくない

そんな彼女を壊さないように大事に、大事に
そっと髪の流れにそってなでた


「じゃあ…アタシたち、仲間ですね!!」

先程の空気とは打って変わって無邪気な女の子に見えた

でも、少し顔が紅い


彼女は化粧をしている訳ではない

アイシャドウとか言うやつも、マスカラとか言うやつも、グロスと言うやつもなにもかもつけていなかった


そんな素朴な彼女が彼女らしさを更に引き立てた


なぜ顔が紅いか解らない


僕と同類ってのが嬉しいのか?


彼女の紅い笑顔をみて僕の頬も紅く染まって火照るのが解った


< 3 / 25 >

この作品をシェア

pagetop