寂しいキューピッドは溺れた
「・・・なに、すんのよっ・・・・・・」


かすれて震えた声なんて、情けない。

けど、どうしようもなく揺さぶられる心を、どうすればいい?



泣きたくないのに、溢れ出そうな涙をどうしよう?





「嫌なら抵抗すればいい」


低い声は、どこか甘さを含み、妙に妖艶だ。

だけど、もしかしてコイツ・・・



「・・・怒ってるの?」


やけに淡々とした口調は、彼がかなり怒っている時のものだ。

怒りが大きければ大きいほど、コイツは普段の明るさからは考えられないほど、冷たく淡々としていく。


今の口調は、あたしが今まで聞いてきた中で一番淡々としている。





「怒ってる?ちょっと違うな。

俺は呆れてイラついてるんだ」


「それを怒ってるっていうんじゃない」


「違う。俺は“呆れている”んだ。怒っているんじゃない」


「あ、そ。

で、いい加減離してくれない?あんた、いきなりどうしたのよ」




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