寂しいキューピッドは溺れた
「・・・ある」


ぼそりと呟かれた言葉が気になったけど、抱きしめられていてコイツの顔なんて見えなかった。




「な、にっ・・・?」


「関係あるって言ってんだ」


「はっ・・・?」


「なぁ、あんなボケボケ野郎、もう見んなよ」


「っ!」



コイツ、気づいて・・・?




ふっとあたしを抱きしめていた腕の力が緩んで。



ーー息を、のんだ。





見えた顔が、あまりにも。

苦しげで、切なそうで。



くしゃりと歪んだ顔は、泣き出しそうなほど必死だった。







「・・・こっち見ろよ、アホ」



その声に
その言葉に

込められた想いに気づき、涙があふれた。





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