許されるなら‥‥もう一度
六章

凌‥‥サイド


私は、彼女の事を知っていた。

多分、間違いなければ、
一輝さんが、大学時代に結婚したいと
思うほどに、恋い焦がれていた女性‥‥
‥‥‥ 一美さん。

一輝さんと名前も似ていて、
運命のような人。

先日、一輝さんのお宅に伺った時に
お父様が、懺悔の気持ちで話してくれた。

二人は、熱烈な恋愛をしていたこと

一美さんは、母子家庭で、
一美さんの母親は、
小さなスナック経営しながら
一美さんを一人で育てていた。

大学に入ると、忙しい母親を助けるために
一美さんも大学に通いながら
手伝っていた。

教授になる前の一輝さんにとって、
その事がハンデになると
考えたお父様は、彼女の就職先が、
自分の教え子の会社だったために、
彼女の勤務地を僻地に変更させた。

そして、一美さんに
二度と一輝さんに会わないように
約束させ、約束を破ったら、
母親は店を無くす事になると伝えた。

一美さんは、母親想いの方だったので、
一輝さんとの連絡を全て断って
一輝さんのもとを去った。

苦渋の決断だったと思う。

一美さんが、自分の元から、
なにも言わずに
姿を消してしまい、
一輝さんは、脱け殻のようになり
一年、二年と、必死に
一美さんを捜したいたが
見つける事は出来なかった。

数年が過ぎ
一輝さんの目に、
光が戻ってきたと
思っていたら、
私を家に連れてきた·····と。

「凌、一輝を頼むな。
私が、傷つけたあの子を
癒せるのは凌だけだから。」
と、お父様は私に、
話して聞かせてくれた。

私は、
「癒せるか、わかりません。
でもお父様、
私は、一輝さんが、大好きですから、
一輝さんのそばを離れたくありません。
もちろん、
お父様もお母様も大好きですから‥」
と、言うと

お父様は、
「ありがとう。」
と、涙を流された。

お父様が、自分のしたことを
後悔しているのが、よくわかった。


私にも、一輝さんの前に付き合った人が、
いなかったわけではないが、
結婚を意識した人は、一輝さんしかいない。



一輝さんは、
今、一美さんが、
目の前に現れたら

私より、一美さんを選ぶのではないか。

と、私は、お父様の話を聞きながら

考えたのを覚えてる。



  それが、現実になるなんて‥‥‥‥
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