ヒスイ巫女4
「く、くそ。」
琉生は地面に体を打ち付けられ、悔しそうに顔を歪ましていた。
「来い!作戦変更だ。」
そういうと晃たちが一斉に消えた。
「何をする!あなたはもう戦えない。勝負はもうついたわ!」
「いいや、たとえ俺が戦えなくても、勝つ方法はある。」
琉生が何かに刃物を近づけた。
とたん、ヒスイの悲鳴に近い叫び声が聞こえる。
「スイ!!」
琉生が刃物を近づけているのはスイだ。
続いて陸、明音、蒼の声も聞こえる。
「蓮!!」
「凛音!!」
「空!!」
子供それぞれに刃物が首元に突きつけられている。
「お前は...」
ヒスイが暗い声でいう。
「お前はどこまでクズなんだ!!」
ビリビリと空気が震える。
「クズ、そんなことを言っていいのかな?君たちの子供は俺達の手の中にある。」
「ママ...」
スイのか細い声が聞こえる。
「分かった...何をすればいい」
手の空いている晃がヒスイに近づいた。
「簡単だ。その男、晃を殺れ。」
ヒスイの目がこれでもかと開いた。
とたんに手足が震えてくる。
(私が...晃を殺す?)
ヒスイは自分の中で考えをふくらませる。
(でも、歯向かえば子供たちが殺されてしまう。なら...)
晃が目を閉じ、ヒスイの前にひれ伏す。
(殺すしかない!)
ヒスイの手には剣が握られ躊躇もなく振り落とした。
首が飛んだ。
「お前は本当に損な奴だな。」
琉生がスイ以外を離す。
それに気づいたヒスイが
「話が違うぞ!琉生!」
怒鳴った。
「いーや、違っていない。確かに俺は晃を殺せと言った。だが子供たちを開放するとは一言も言っていない。」
ヒスイの早とちりだとでもいうようににやけた。
「次世代のヒスイだと...!?俺は転生もできず、死ぬことも出来ないなら、せめて奪ってやる。幸せに暮らすお前の大切なものを!」
ヒスイは即座にとぼうとしただが、体に力が入らない。
能力を使いすぎ体力がなくなったのだ。
(くそ、こんな時に...
どうする?どうすれば...)
だが時間など残されていない。
もう琉生を止めることなどできないだろう。
スイは自力で抜け出せないだろう。
スイは...
「死ぬー「死なねぇよ」
ヒスイの横に風が吹く。
それは2匹の竜のように力づよく優しい。
その風はスイを救い、琉生を貫いた。
その風の名を
「蒼、晃」
という。
晃は先ほどヒスイが首を落としたはず...
「俺は琉生に操られていた。俺に命を与え、その上で操られていた。だから俺が1度死ねば支配されないということだ。それと・・・」
晃はヒスイの方を見た。
「久しぶりだな、ヒスイ」
その言葉でヒスイの頬が濡れる。
悲しい?苦しい?
違う、嬉しいのだ。
「おい、俺の前世今は戦いに集中しろ。」
「来世よ、もう戦いは終わっている。あとは・・・術をかけ転生させるのみ。それが出来るのは神の力を持つヒスイだけだ。ヒスイ出来るか?」
ヒスイは琉生の前に立った。
琉生は震えている。
「あなたは晃を奪い、私の子供にも手をかけようとした。憎むべき存在。」
蔑むような目。
「でも、この世界で前世で無くした人たちに会わしてくれた。ありがとう。」
暖かな目。
「あなたが来世幸せになる事を望む。」
トレジャートレーション(転生)
琉生の体の細胞1つ1つが輝き天に召されていく。
「きれい・・・」
スイが呟いた。
光がなくなりその地には琉生が転生させた晃たちが残っていた。
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