【完】幼なじみのあいつ
3章 地区予選は注意予報
修学旅行が終わって暫くたった頃、翔ちゃんと早紀ちゃんがまた付き合う事になったと噂で聞いた。
どうせ翔ちゃん達が別れた理由って犬も食わないようなケンカをして、今は仲直りしたのだろう…。
なんて勝手な憶測をしつつ、トイレからの帰り道。
廊下を歩いていると、翔ちゃんと早紀ちゃんが仲良く話しているのが見えた。
この頃の2人は暇さえあれば、早紀ちゃんが翔ちゃんの所に来ている。
以前も頻繁に二人が会っているのを目撃したけど、今ほどじゃない。
だって今は休み時間の度に、早紀ちゃんが私達のクラスに来ているんだもん…。
仲良く一緒にいる二人を見たくない私としては、そんな毎時間が苦痛でしかたなかった。
取り合えず、二人の姿を見ないようクラスの中に入ろうと試みる事にする。
二人から視線を逸らしながら、横を通り過ぎた。
不意に早紀ちゃんが翔ちゃんから視線を外し、私を見たのを感じた。
え?
その視線を辿るように早紀ちゃんを見ると、冷たい瞳が私を映していた。
初めて見た早紀ちゃんのその瞳に驚いた私は、そのまま足が止まってしまう。
すると今度は砂糖菓子のような、柔らかい笑みを私に向けてきた。
「こんにちは、鈴さん」
「あ…、うん こんにちは?」
少しばかり引きつった笑いをしてしまった私だけれど、それは致し方ないと思う。
だってこの頃の早紀ちゃん、私に対する接し方が若干だけれど冷たくて怖いんだもん。