【完】幼なじみのあいつ


もしかして?


ある予感にベットの上で痛む身体をなんとか起こし、窓に向かってゆっくりと歩いて行く。




シャッ…と音をたてカーテンを開くとやはりと言うか思った通り、翔ちゃんがいた。


私の部屋の前にある翔ちゃんのベランダから棒を持って、ニッと笑いながら手を振っている翔ちゃん。




そこに翔ちゃんがいるとは思っていても本当にいたとなると、目をパチパチと瞬き驚きの表情を隠す事が出来なかった。




翔ちゃんがこんな風に棒で私の窓を叩くなんて、いつ以来だっただろうか?


私の隣の家の翔ちゃんは子供の頃はよく私の部屋の窓を棒で突っついて私を呼んだり、家から家を飛び移って家に遊びに来る事なんてしばしばあった。



でもここ2・3年はそんな事、全くなかったよね。



一体、なんの用かな…?




「どうしたの、翔ちゃん?」


「階段から落ちたって聞いた。大丈夫か?」



カラッ---


窓を開け少し離れた位置にいる翔ちゃんに尋ねると、いつもと違う真剣な表情で私を見つめるその瞳にトクン…と心臓が鼓動する。



あぁ、やっぱり私は翔ちゃんが好きなんだな…と再認識しながらも心配してくれた事が嬉しくて口元が緩んだ。




「うん、大丈夫。ただちょっと打撲が酷くて、一週間学校を休むことになっちゃった」


「試合…、出れなくて残念だったな」



翔ちゃんも同じバスケ部だから大会に向けて頑張っていたのを知っている分、私の悔しさは十分分かっているのだろう。




「……うん、凄く悔しいし、悲しいよ。だから私の分まで翔ちゃんは頑張ってねっ!たくさん応援するから」


「あぁ、がんばるよ。それにしても何で階段から落ちたんだ?」



やっぱりそれ、聞いてくるんだ?




そうだよね…、


試合前なんだから、怪我をしないよう気をつけるのが普通だもんね。




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