【完】幼なじみのあいつ
「ちょっと急いでたら滑っちゃって…」
へへっと笑うと翔ちゃんは少し呆れた顔をしながらも、それでも心配そうに揺れる瞳に嬉しくなる。
「…俺がお前を保健室に連れて行ったんだぞ。感謝しろよな?」
翔ちゃんの、その言葉に驚いた私の口が止まる。
あれっ?
翔ちゃん、授業はどうしたの?
私より先に、理科室に行ってたよね?
それなのにどうして、翔ちゃん私を見つける事が出来るの?
不思議に思い翔ちゃんを見上げると、翔ちゃんは少しバツが悪そうにしながらも答えてくれた。
「たまたま忘れ物を取りに教室に戻ろうとしたら、お前が階段下に倒れてたんだ」
偉そうに、そう言われてしまった…。
なんでそんな言い方なのよ?
って言うかもしかして翔ちゃん、照れてる?
私から顔を背けているし---
何故、テレてるかはよく分からないけどお礼だけは言っておこう。
「翔ちゃんのおかげで助かったよ。どうもありがとう」
別に…、と言って顔を手で覆っている翔ちゃん。
やっぱりテレてる…。
どうして?