【完】幼なじみのあいつ
すぐにまた、流れは相手チームにいってしまう。
途中から入ってきた190cmコンビが動き出したのだ。
大きいばかりじゃない。
動作が機敏で的確なのだ。
う、上手すぎるっ!
初めて見る選手だからきっと、まだ1年生なのだろうか?
もう残す所、試合が終わるまで、わずか1分---
1点差で相手チームに負けている今、この1分以内にゴールを決めなければ負けは確定となってしまう。
翔ちゃんの瞳は諦めておらず、睨みつけるようにボールを追っていた。
翔ちゃん---
ボールが翔ちゃんの手に渡る。
瞬間、翔ちゃんが走り出した。
向かってきた相手をバックターンで交わし、リングに向かっていく。
リング下には相手チームが犇きあっていて、翔ちゃんは中々たどり着くことが出来ずリング下を通過してしまった。
「翔ちゃーーーんっ!!!」
恥ずかしさなんて忘れてた私は、思わず大きな声を上げてしまった。
その時、翔ちゃんがジャンプをしながら体を捻ってシュートを放つ!!!
その時、時が止まったように感じた---
入ってっ!!!!!!
ボールが、リングに向かっていく。
入れ!
入れ!!
入れーーーー!!!!
祈るように両手を組み、ボールの動向をシーンと静まった体育館内にいるみんながジッと息を潜めて見守る。
ボールがリングの枠を、クルクル円を描くように回った。
そして…、
ボールが地面に向かって落下していくのを、スローモーションを見ているかのように落ちていく---
瞬間、耳を劈く程の大きな歓声が体育館を揺るがした。