【完】幼なじみのあいつ
4章 恋は混戦模様
地区予選決勝の帰り道、夕焼け色に染まった翔ちゃんの横顔を見つめながら土手を二人並んで歩いた。
一緒に歩いている翔ちゃんは言葉数少なく無表情で、どこか一点を見ている。
一体、どこを見ているの?
それとも今日の試合の事、考えているのな?
そんな翔ちゃんにどう言葉をかけたら良いか分からなくて、チラチラと翔ちゃんを伺い見ていた。
やっぱり話しかけるタイミングがつかめない。
こんな時、何を話したらいいの?
ため息が漏れ出てしまった。
瞬間、隣から苦笑が漏れた。
チラッと翔ちゃんに視線を向けると、こちらに笑みを向けている。
「…何よ?」
「…いや。俺に話しかけたいくせに、どうしようか迷っているところが面白くてつい…」
翔ちゃん、気がついてたんだ?
私の事、気にしてないようにみえたのに…。
「分かってるんだったら、意地悪しないで翔ちゃんから話しかけてくれれば良かったのにっ!」
なーんて思ってもいない事を言いながら、ふくれっつらで睨み付ける。
翔ちゃんはそんな私を見て、笑いながらごめんと謝ってきた。
本当は、謝ってほしくなかった。
大好きな人が辛そうにしている時、見ているだけで何も出来ないでいる私の方が謝るべきなのに。