【完】幼なじみのあいつ


「鈴っ!翔っ!」


家まであと少しというところで、亮ちゃんの声が聞こえてきた。


前から学生服を着た亮ちゃんが、自分の家の門扉前に立っている。



丁度、学校から帰ったところなのだろう。




「試合、終わったんだな。どうだった?」


「負けちったー」



へへっと、亮ちゃんに照れ笑いをする翔ちゃん。


とっても悔しかったはずなのにおどけた言い方の翔ちゃんに、胸が痛くなる。




「そうか…、残念だったな。でも決勝まで行ったなんて凄いよ。俺達野球部は、準決勝で敗退だったし」


「ま、負けちまったら決勝も準決勝も変わらないよ」



そんな2人のやり取りを見ていて、ホッと息を零した。


修学旅行の後、二人はいつの間にか仲の良い二人に戻っていた。


ケンカの原因が何だったのかは今だによく分からないけど、二人の仲が元に戻って本当によかったと二人を見るたびにそう思う。




目の前で繰り広げられる2人のやり取りを微笑ましく見ていたら、急に亮ちゃんが私に視線を向けてきた。




「鈴、ちょっと話しがある」


話し?


何の話しだろう?



真剣な眼差しでそう言われると、少し怖く感じる。




それでも聞かなくてはいけない雰囲気に、私はコクコクと頭を上下に動かして了解の合図を送った。




「…じゃ、俺行くな」


ヒラッと私達に手を振った翔ちゃんは、自分の家へと帰っていく。



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