【完】幼なじみのあいつ
「鈴?まだ、言ってくれないのか?」
そう言って亮ちゃんが膝立ちのまま、ゆっくりと近づいてくる。
怖い!
亮ちゃんに対して初めて恐怖と言うものを感じ、ガタガタと身体が震えだす。
「や、やだ…。止めてよ亮ちゃん…」
「………」
潤む私の瞳をジッと見つめていた亮ちゃんが、今度は何かを諦めたようにため息をはいた。
な、何?
今度は何をするの?
ビクビク震えながら亮ちゃんを見ていたがそれ以上、私に近づいて来る様子はない。
「怖がらせてゴメン…」
「え?」
「どうしても鈴の口を割らせたくて、無理に聞き出そうとした」
本当に申し訳なさそうに項垂れる亮ちゃん。
「亮ちゃん…」
「もう何もしない。……でも、お願いだから本当の事を教えてくれないか?」
そんな顔をされたら、まるで私が悪い事をしているみたいじゃん。
もう、これ以上、亮ちゃんに心配かけたくない。
そう思った私はとうとう、本当の事を話す事にした。
「…んっ、あのね、……実は早紀ちゃんが私の事、階段から押したの」
その言葉に目を見開き、しばらく驚きを露にしていた亮ちゃん。
「それって、翔の彼女だよな?」
「…うん。早紀ちゃんと踊場で話した後、階段を下りていたところを早紀ちゃんにおされたの」
その時の事を思い出し、背筋がゾクッと震えた。