【完】幼なじみのあいつ
「そう思いません?鈴さん」
よく分からないけどその言葉に、思わずコクコク頷く私。
あ、私もヘタレだな---
でもここはヘタに、否定しちゃいけないような気がした。
だって今の早紀ちゃん、何かとっても怖いんだもん…。
そんな私に『ですよね…』と言いながら、ニッコリ頷いてみせた。
「翔ちゃんはヘタレだから、鈴さんから告白しないと何も始まりそうもないですよ?だから頑張って下さいね」
「は、はい?」
告白する気は全くないけれど取りあえず、コクンと頷いてみた。
しつこいようだけど今の早紀ちゃん、本当に怖いんだよ?
頷いた私を見て安心しするように微笑んだ早紀ちゃんは、話しは終わったとでも言うように踵を返す。
えぇ?
もう帰るの?
一体早紀ちゃんは、私に何が言いたかったのよ?
唖然と早紀ちゃんの後姿を見送っていると、くるりと振り返った早紀ちゃん。
え?
今度は何?
すると早紀ちゃんは、今まで見た中で一番綺麗な笑顔を私に見せてくる。
その表情に呆けていると早紀ちゃんが、私の心臓が止まるほどの爆弾を投下してきた。
「私、今付き合っている人がいるんです。凄く幸せです!だから早く鈴さんも幸せになって下さいね!」
そう言った早紀ちゃんは軽やかに、私の前から去って行った---
あれ?
早紀ちゃん?
あなたは翔ちゃんと別れてまだ、一週間もたってませんよね?
うわ~、変わり身が早いなぁ。
関心しながら今はもう誰もいなくなった裏庭で、フワリと笑ってしまった。
ま、本人が幸せならいっかっ!
うん、早紀ちゃんが羨ましいな。
私も翔ちゃんと…、
なんてそんな事、あるわけない。
それは絶対に。
ほんと早紀ちゃんが…、
羨ましいなぁ---
明日から夏休みだっていうのに、浮かれていた気持ちが一気に萎え私は肩を落としてしまった。