【完】幼なじみのあいつ
「…なぁ、知ってるか?」
「何よ?」
翔ちゃんを意識しないよう周りをキョロキョロしていたところで、横から話しかけられる。
翔ちゃんに視線を送ると、目と目がしっかりと合わさった。
ドキッ---
折角、落ち着いてきた胸がまた騒ぎ出す。
もう、人の気も知らないで!
今だ器用にボールを落とす事なく回し続ける、翔ちゃん。
テレを隠すため、翔ちゃんの指先でクルクル回るボールに……、つんっ!と突いてやった。
「おわっ!お前、何すんだよっ?!」
翔ちゃんの指先から、一瞬離れたボール。
しかしすぐに、翔ちゃんの指先へと戻される。
焦った翔ちゃんの顔を見たら、気持ちが落ちつく事が出来た私。
そんな自分の気持ちに内心ホッとしながら、ツンとすまし顔。
「はいはい、ごめんなさいね~っ」
「お前、本気で謝ってねーし…」
眉根を寄せながら、ぼやく翔ちゃん。
そんな翔ちゃんを心の中で、そっと微笑んだ。
「チッ、話しがそれちまったじゃん。それより亮平の事だけどさ…」
「亮ちゃんがどうしたの?」
突然、亮ちゃんの名前が出て驚いた。
翔ちゃんがどうしたもんか?みたいな顔で続きを話し出す。
「…高校、俺達と違うとこ選んだみたいだぜ。知ってたか?」
その言葉に首を振った。
亮ちゃんからそんな話し、全く聞いていなかったからびっくりだ。
「鈴、驚きすぎー。その顔、おもしれ-し」
ツンと、頬を突つかれた。
驚いた顔が面白いだなんて、ちょっと酷すぎじゃない?
そう思っている私の顔は裏腹で、顔が少し赤くなる。
だってホッペタ、触られたんだもん。
しょうがないよね?
それより亮ちゃん、私達とは違う高校に行く事にしたって本当なんだろうか?
以前、三人で高校はどこに行こうか?って話し合った時、三人一緒に同じ高校行こうって決めたよね?
それなのに、どうして急にそんな事を言ったの?