【完】幼なじみのあいつ
それからはもう、翔ちゃんの独壇場であった。
私がどんなに頑張っても、翔ちゃんのスピードには全く歯が立たず…。
力強い華麗なドリブル捌きなんかもう、………むかつくくらい全然追いつかなかった。
「はい、5点目ーーーっ!」
楽しそうに最後の5点目を入れていた翔ちゃんに、私は物凄く恨めしげに睨みつける。
「んじゃま、約束どおり命令しちゃおっかなー」
ボールを持って私の前にやって来た翔ちゃんは、もう満面のニヤニヤ顔で腹がたつっ!
「そうだな…『おーいお前ら、何やってる?休憩終わりだぞー』………」
翔ちゃんの言葉に被せて男バスのキャプテンが体育館から顔を出し、私達を呼ぶ。
「はーいっ!今行きまーす!!!」
私は大きな声で返事をしたが、翔ちゃんはチッと舌打ち---
何故、舌打ち?
「命令はまた後でな。……夕飯食べ終わったらここで待ってろ」
そう言うと翔ちゃんは、私の返事を待たずにさっさと体育館に向かって走ってしまった。
何で私を置いていくのよ?
一緒に行けばいいじゃん。
翔ちゃんの後姿を睨みつけながら、私も急いで体育館へと向かった。