【完】幼なじみのあいつ
「ごめん、待たせたな。ちょっと後片付けしてたら、遅くなっちまった」
ゴクリ…と、喉を鳴らす。
告白する覚悟を決めた私は、翔ちゃんの言葉にコクンと頷きながら口を開いた。
「あの…」
「今来た所なんだけど、ごめん!ちっと用事が出来たから俺もう行くわ。話しはまた明日、この時間この場所で。っつー事で」
じゃっ!
と翔ちゃんは、悪びれもせずひらひら手を振り踵を返す。
そして宿舎に向け走ろうとした…、ところを私は急いで翔ちゃんの腕を掴んだ。
「ちょ、ちょっとぉ?」
「なんだよ」
冗談でしょ?
人が告白する覚悟を決めた矢先に、呼び出した本人が理由も言わずに帰ろうとするなんてそんなのダメだよね?!
告白しようと開いた口が一瞬固まり、唖然としてしまった私だったが取り合えず翔ちゃんに理由を聞かなくてはと慌てる。
「ちょっとっ、人を待たしておいて何も言わずに帰るってどういう事?用事って何よ?」
「今から3年の男らとコーチで花火買いに行かなきゃいけねーの。あっ!明日の夜は皆で花火大会だってさ。んじゃま、そういう事で」
そう言うと翔ちゃんの腕を掴んでいた私の手をポイッと放り、走って行ってしまった。
そんな走っていく翔ちゃんの後ろ姿を、私はただただ唖然と見送るだけだった---