【完】幼なじみのあいつ


よしっ!


と気合を入れ、空を見上げた。



プラネタリウムのような満天の星空に、吸い込まれそうになる。




「…そろそろ戻らなくちゃね」


本当はもう少しこの星空を堪能したかったけど、そろそろ戻らないとみんなが心配するだろうと身体を起こした。



夜風を身に纏い名残惜しげに空を見上げながら、宿舎へと向かう。






宿舎に辿り着いた私は靴からスリッパに履き替え一歩、足を踏み出したところで、足音がこちらに向かっている事に気付き顔を上げた。




「鈴先輩っ!お風呂お先に入っちゃいましたよぉーっ」



明るい声色で私に向かって話しかけてきたのは、花ちゃんだった。


お風呂で温まったからか、顔を火照らせている。




「お風呂は気持ちよかった?」


「はいっ!温泉なだけあって凄く気持ちよかったです。…あっ!明日の夜、3年の先輩方最後の部活の日という事で、送別会と花火をやるみたいですよっ」



「そうなんだ?」


花火をやるのは翔ちゃんから聞いていて知っていたけど、ここは知らなかった事にしておく。


誰から聞いたんですか?なんて聞かれて翔ちゃんと答えたら、また花ちゃんに私と翔ちゃんの関係を怪しまれるしね。




「もう鈴先輩達が引退なのかと思うと凄く寂しいです…。たまには部活に遊びに来て下さいね」


「ありがとっ。…私ももう部活が引退なのかと思うと凄く寂しいよ。花ちゃん、一年生をがんばって引っ張っていってね」


「はい、がんばりますっ!」



にっこり笑顔を振り撒く花ちゃんに癒されながら、私も花ちゃんに笑顔を返す。


そして私と花ちゃんは薄暗い廊下を、オバケが出そう~なんて言いながら同じ部屋に向かって小走りでかけた。





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