【完】幼なじみのあいつ


「…あぁ、見てたんだ?実はほら、奈良公園で早紀ちゃんと2人っきりになったじゃん?その時、早紀ちゃんと別れ話ししてさ…」



翔ちゃんの言葉にうんうん頷く。


どこか居心地悪そうな顔をしながらも、翔ちゃんは続きを話してくれた。




「で、ホテルに着いて風呂入って出たら早紀ちゃんが俺の事待っててくれて。話しがあるっつーから2人で話してたんだけど…」


「翔ちゃん?」


言いづらそうに言葉を止めた。



どうしたんだろう?


名前を呼んでみれば、はぁ…と一つ息を零し続きを話し始めた。




「別れるから最後にキスしてって、早紀ちゃんが言ってきたんだよな」


「ふーん………」


そっか…。


そんな事があったんだ---




目の前で見たあの時のキスシーンを思い出し、フルフルと首を振った。


ダメだ…、


気持ちが落ちてしまう。



いくら今、二人は恋人同士ではなくても、自分の好きな人のキスしている姿はもう見たくないし思い出したくもない。




「つーかお前、覗き見すんなよな?!」




何とか忘れようと努力している私に追い討ちをかけるように、何故か逆切れされてしまい目を瞬いた。




「うわっ!ちょっと何、逆切れしてんのよ?切れたいのは私の方だよ!だってあの時、大泣きした後、熱まで出したんだからねっ!」


「え?そーんなにすーずちゃんは、ショックだったの?」


「別にショックじゃないしっ!」



私の言葉にさっきまで口を尖らしていた筈の翔ちゃんの顔が急に満面の笑みになりながら、ごめんごめんと謝ってきた。




ちょっと!


笑顔で謝られても、嬉しくないんだから!!!



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