【完】幼なじみのあいつ


「うそうそ。鈴が俺の事、気にしてくれてすっげー嬉しいんだけど?」


「…別に気にしてないし」



今度は私が、口を尖らせる。


分かった分かった、なんて言いながら私の頭を撫でるのは止めて欲しい…。




まるで子ども扱いでムカつくんだもん。


私の事、好き………なら、少しは女扱いして欲しい………な?




上目遣いで翔ちゃんを見れば笑顔でまた、頭を撫でられてしまった。




うぅ…、


もしかして好きって、別の意味の好きって事だったのかな?



自信がなくなってきた---




「…じゃ、そろそろみんなの所に行くか?」



落ち込んでいるところで、上から声をかけられはっとする。



そうだった!


今はまだ、みんなで花火をしていたんだった。




こんな事をしている場合ではなかった…と、大きく頷き足を一歩動かしたところで腕を引かれた。




「えっ?」


「……ほらっ」



腕を離したかと思ったら、今度はその手が私の右手をキュッと握ってきた。




………手を、繋いで歩くの?



ドキドキとやけに煩い心臓を押さえるのに必死な私と違って、翔ちゃんは涼しい顔で歩き始める。


それにつられるように私も歩き出しながら、翔ちゃんを見上げた。




やけに手馴れているように感じて嫌だなって思うけど、こればっかり恋愛歴が違うんだからしょうがないよね?



包み込むような温かく大きな手に、幸せが胸に染みてくるのを感じてこそばゆい。





あぁ、幸せだなぁ---


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