【完】幼なじみのあいつ
「鈴せんぱーいっ!」
花ちゃんの声にはっと顔を見合わせて、そしてどちらからともなくお互の手を離す。
汗ばむ手に翔ちゃんと離れた事で冷えていくのを感じて、寂しさを感じた私は無意識の内に翔ちゃんに手を伸ばしていた。
でもその手はもう一度、私の手に触れてはくれなかった。
それが悲しくて横にいる翔ちゃんを見ると、視線の合ったその瞳はどこか諦めたように私を見つめていた。
「俺、向こうに行くわ」
フッ…と笑みを私に向けた翔ちゃんは、すぐに視線を逸らすと前方を見据え歩き出した。
私を置いて行くの?
寂しく感じた心はすぐに浮上する。
それどころではないようだ。
花ちゃんが、私に向かって走ってくる。
もしかして翔ちゃんは二人でいるのを花ちゃんに見られるのがテレくさいから、私の傍から離れたのだろうか?
遠ざかって行く背中をジッと見ていると先程、キスした事を思い出してしまい身悶えてしまった。
うはっ!!!
私、翔ちゃんとキスしたんだよね?
夢じゃないよね?
翔ちゃんとキスした事を思い出して今更ながらに再度、顔を真っ赤に染め上げる。
すると…、
ポンッ…と誰かに肩を叩かれ、身体が跳ねた。
はっと気付いた時には花ちゃんが私を覗き込んでいて、目が大きく見開く。
「うひっ?!」
「鈴先輩?顔が真っ赤ですけど大丈夫ですか?」
驚いた私は、へんな声を上げてしまった。