【完】幼なじみのあいつ
必死になって首を振る私。
そんな慌てっぷりの私を見て花ちゃんは、スクスク笑った。
何かもう、先輩の威厳なんてあったものじゃない。
「鈴先輩の事をまだまだからかっていたいのですが、そろそろお開きみたいです。今は皆、片付けしてるところなので、早く行きましょう?」
「あ、大変!のんびりこんなところで、話してる場合じゃなかったね!」
花ちゃんの言葉に急いでみんなのいる場所に向かって、駆け出した。
私より前を走っている花ちゃんは、たまに後ろを振り向いては私に微笑みかける。
そんな姿に花ちゃんって、私よりしっかりしていて年上みたいだな…と思った。
楽しそうに後片付けをしている皆のもとにたどり着いた私達も、急いでそれに参加する。
とは言ってももう、使用した花火は地面に落ちてはいなかったから、後はまとめてあるゴミ袋を手に持ち外にあったポリバケツの蓋を持ち上げてその中にポイしただけ。
うん、綺麗になったな…。
と思ったところでコーチから解散するように言われた。
ゾロゾロとみんなと一緒に宿舎に向かって歩きながら、考えるのはやっぱり翔ちゃんの事。
小さい頃からずっと好きだった翔ちゃんと、付き合う事が出来るなんて本当に夢のようだ…。
気持ちがふわふわ浮つき、足取りは地面に足が着いていないかのように覚束ない。
翔ちゃんが早紀ちゃんと付き合っていた時は、本当に辛くて苦しかった。
このまま一生、こんな思いをしなければいけないのかと思っていたのに…。
まさかこんな事になんて、幸せすぎて自分が死んでしまうんじゃないかと思ってしまう。