【完】幼なじみのあいつ


「…亮ちゃん?」


いつもの私だったなら、いきなり抱きしめられたらかなりうろたえていたはずだ。


でも今の亮ちゃんはこのまま泣いてしまうんじゃないかっていう程、弱々しくてそんな事、出来なかった。




「ごめん…。少しこのままでいてくれ」


亮ちゃんに抱きしめられたまま、その言葉にコクンと頷いた。




---亮ちゃんは私の事を、小さい頃からずっと好きだったと言ってくれた。


私だって翔ちゃんの事をそのくらい前から好きだったから、亮ちゃんの気持ちがとてもよく分かる。



分かる…けれど、その気持ちには答えてあげられない。




だから…、


せめて亮ちゃんの願いが私を抱きしめる事…なのだとしたら、その願いを叶えてあげたいと思ったのだ。




私の瞳から、涙がこぼれ落ちる。





ごめんね、亮ちゃん。




「…私の事、好きになってくれてありがとう」


私の言葉にピクリと亮ちゃんの身体が反応し、さっきより強めに私を抱きしめてきた。




亮ちゃんに、素敵な女性との出会いがありますように---


そう願いながら、私は亮ちゃんの背中を撫でた。


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