【完】幼なじみのあいつ
「い、いたの?翔ちゃんっ」
「いたのじゃねーよ。いつまで待たせんだっ!」
睨み付けてきた翔ちゃんにへへっと笑ってみたけれど、よけい睨まれてしまった。
こ、怖い---
「ごめんなさい」
今度は素直に謝った。
そんな私に対しフンッと顔を背ける翔ちゃんはそのまま亮ちゃんに視線を向ける。
「…亮平、もういいか?」
「あぁ…」
ずっと好きだった人への気持ちをすぐに切り替える事なんて出来るわけはないけれど、それをおくびにも出さず亮ちゃんは平気な顔をしている。
正直、凄いなって思った。
そんな亮ちゃんだから、カッコいいんだね。
「鈴を……、頼むな。翔」
「まかせろ。言われなくても鈴は一生、俺が守る」
亮ちゃんの言葉に力強く頷いた翔ちゃんは、持っていたバットを手渡した。
バットを受け取った亮ちゃんは、変化球コースに入り機械にお金を入れる。
バットをかまえる亮ちゃんは、さすが元野球部なだけあってとてもさまになっていた。