絡繰りに潜む誘惑
「分かってるって!!俺なんか狙って殺しても何にも得しねぇし」
あはは…と哀しそうな笑みを浮かべると…
「ありがとうおっちゃん!!腹いっぱいになった。俺、もう行かないと…!!」
哀しさを紛らわすように言った。
「あ…あぁ、そうだな」
憐れみの目なのか、同情の眼差しなのか分からない視線を向ける事しか出来なかった。
「うん。行ってくる」
そうしてセイエは工房を飛び出して行った。
走って走って走ると、真正面には大きな砦が見えてくる。
黒々とした鉄格子はまるで牢屋のようにも見えた。
城はゴシック建築で整然としている。
冷たい冷気を醸し出しているが、そんな所がセイエは好きだった。
朝日はもうすっかり顔を出している。
眩しそうに顔を上げると城の門には顔の見慣れた門番が2人立っていた。