絡繰りに潜む誘惑


黒に近いダークブラウンの髪、骨格の綺麗な輪郭、そして目元がキリッとしたガラス玉のような黒い瞳を持つ男が扉の前に立っていた。


それは、紛れもなく昨日俺を大男から救ってくれて、この俺をお嬢さん呼ばわりしたあの男だった。


『お前はーッ!!!』


お互いに指を差し合いながら叫んだ。


「おや、2人とも知り合いかい?」


『知らない(です)!!』


ぽかんと口を開けて状況が飲み込めていないおじさんにこの男は昨日の事を話し始めた。


「って事で、昨日俺がこのお坊ちゃんを助けたわけです。」


にこっ、と眩しさ溢れる笑みを俺に向けた。


(コイツ~ッッ!!後で覚えてろ!!)


敵対心剥き出しの目でその笑みを睨んだ。
そんなのコイツには効かないって自分でも分かっているのに…。


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