絡繰りに潜む誘惑
ドンッ!!
硬軟な何かにぶつかり俺はレンガ畳の地面に弾き返された。
「いっ……てッ!!」
地面にぶつけた腰の痛みと滲み出してくる涙を堪(こら)えながらぶつかった物を見ようと顔を上げた瞬間に飛んでくる怒鳴り声。
「てめぇっ!!どこ見て走ってんだよ?!」
襟元を掴まれ強引に立たせられる。
ズキズキと痛む腰にお構いなしのその衝撃に怒りを覚え、相手を睨みつけた。
どうやらぶつかったのは、がたいの良い色黒の大男。
どうやら、酒を飲んでいたらしく酒の臭いが鼻を突く。
「聞いてんのかッ!?」
男は荒々しく声を上げ怒鳴り散らしている。
襟元を掴んでいる腕を見ると、この国に反する悪魔と骸骨の刺青が掘ってある。
はぁ…、とため息をつき大男を見据えてみる。
その行動に堪忍袋の緒が切れたのか大男は憤怒に満ちた表情を向け、その大きな拳を振り上げた。
(あぁ…もう嫌だ。殴って気がすむのならさっさと殴ってくれ)
大男の拳が自分の顔めがけて飛んできた。
拳が空気を切る音が耳元で聞こえた。
俺は、痛みに耐えられるよう身体を強ばらせ、ぎゅっと瞳を固く閉じた。