絡繰りに潜む誘惑
†運命ノ始マリ†
朝日が丘の上の教会を照らし始めた時、俺は目を覚ました。
昨日、ぶつけた腰がまだ鈍痛している。
、と同時に昨日お嬢さんと言われた記憶が蘇ってきた。
俺が、お嬢さんねぇ…。
寝床のすぐそばにある鏡で自分の容姿を見てみる。
改めて見るとやはり両性のどちらともとれる顔立ちに俺は劣等感を感じた。
「くそ…ッ」
短く言葉を吐き捨て、家を出た。
俺には親がいない。何でいないのかは、息子だった自分でもわからない。
物心付いた時には、あの丘の上にある教会に身を置いていた。
捨てられた…
この街では昔から変な言い伝えが存在する。
『定めを持ちし醜き赤子は、聖なる場所に安置せよ。時が満ち、闇に浮かぶ真紅の邪光が聖なる光と重なりし時、その閃光に打たれ、天空の扉が開かれるーー。』
醜き赤子と言うのが自分じゃないか…そんなことを幾度となく考えた事か。
唇を噛み締めながら住宅街を走り抜き、商店街まで走った。
レンガ式の歩道を横切ると早朝とかかわらず活気の溢れる賑やかな街があった。
商店街通りの両脇には様々な店が立ち並んでいる。どの店も朝市場の支度やらをしていた。