【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~
今日は修学旅行三日目、最終日の朝だ。
昨夜、俺と亮平はなにもしゃべらず無言のまま就寝。
俺達がこんな険悪になったのは、初めてなのかもしれない。
でも亮平が一歩も引かないように、俺だってコイツには負けたくないのだ。
絶対に、鈴を亮平から奪ってやる---
ホテルを出て保津川の船下りに着いた俺達は船に乗る為、ゾロゾロと列を作って並ぶ。
順番が来るまで俺達は友人らと話しながら、時間が経つのを待っていた。
俺の前で楽しそうに話している亮平と鈴を見ながら、ふと早紀ちゃんが視界に入り、目を細める。
早紀ちゃんは友人に囲まれながら、目元を指で拭っているのが目に付いた。
「………」
泣いているのか?
途端、俺の胸がツキンと痛んだ。
きっと早紀ちゃんは俺の事で涙しているのだろう…。
俺が別れ話をしてからずっと、早紀ちゃんは泣いていたんだろうか?
多分、そうなんだろうな---
俺は早紀ちゃんから視線を逸らし、どこを見るでもなくボーっとする。