【完】幼なじみのあいつ ~翔ちゃんサイドストーリー~


ぼんやりしていたら、不意に袖が引っ張られたのを感じた。


斜め前を見ると、鈴が心配そうな顔で俺を見ている。



気だるげに鈴を見ると、鈴は視線を右横に向けた。


そっちは、早紀ちゃんがいる方向だ。




「ね、翔ちゃん。何かね、早紀ちゃん泣いてるみたいだよ?大丈夫かな」


その言葉にチラッと早紀ちゃんを見ると、相変わらず早紀ちゃんは泣いている。


早紀ちゃんを見ていられなくて、視線を逸らした。




「…翔ちゃん?」


「分かってる…」



分かっているからもう聞くな。


俺が全て悪いんだ---




船の順番がが来るまで俺はギュッと目を瞑り、なにも視界に入れないようにした。



* * * * *



俺達クラス全員が、船に乗り込んだ。


俺の前に座った亮平が鈴の肩を抱いているのが視界に入ってきて、眉間にシワが寄る。



イライラする---


周りを見渡すと自然がいっぱいで癒される筈なのに全くそんなもんは効かず、それどころか腹が煮え繰り返りそうだ。


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