color【完結】
「なにか聞いた?その人のこと。」
わたしも知りたい、といたずらっ子のようにアマネさんは笑っていた。
「特には、聞いてないですけど…」
なんと言っていただろう。あの後彼らは僕の存在を無視して、世間話のように鬼塚さんのことを話していたはずだ。
「あ、」
「ん?思い出した?」
「コーヒーが、好きらしいです。」
俺は昨日あの人にコーヒー差し入れしたんだ、喜ばれたんだぞ、と自慢げに話していた。喜んだということは、コーヒーが好きなのだろう、きっと。
「ふーん。あたしはコーヒー飲めないからなあ…」
その人の趣味はわかんないや、と笑い飛ばした。どうやらアマネさんの興味を引く話ではなかったらしい。