color【完結】
気を失うまで殴られたのは初めてだった。
「こいつ、無視しても全然堪えてねえじゃねえか」とか「ニヤニヤしやがって、気持ち悪いんだよ」とか「ネクラが、シネ」とか色々言われた気がする。
ああもう、体は痛いし痛くないところは痒い。蕁麻疹だ。
気がつくと教室の中には誰もいなくて、日はほとんど落ちてオレンジを通り過ぎた暗い空が広がっていた。
起き上がって傍を見ると、グチャグチャに破けてしまった教科書、食べる予定だったお弁当、なにやら焦げ跡のついた鞄が申し訳程度に片付けて床に置かれていた。
「…焦げ跡。」
なんてことだ。制服も焦げて穴が開いている。肌もどこか焼けているんだろうか。そんな痛みはないけど。
小さく丸く開いている穴を見て、タバコかな、と思った。
不良は、タバコが好きなのだろうか。
お金を払って命を縮めるあれを、僕は好きにはなれない。
それとも、自分が吸うためではなく僕にこうして嫌がらせをするためにタバコを入手したんだろうか。
そこまで考えて、それはないだろうと自分で可笑しくなった。
僕に、そんな価値があるものか。