color【完結】
「まさかこんなに酷いとは、思ってなかったわ。」
僕のいじめのことだろうか。まあ、今までで一番酷かったしな…
「何か、手は打たなかったの?」
「なにか?」
手を打つ、とは?
「教師に相談するとか、親に相談するとか。少なくとも目立つようないじめは無くなるでしょう?」
ああ、なるほど。誰かに相談、か。
「先生方は“善処する”と言ってくださいました。去年のことですが。それからなんの変化もありません。あと、僕の両親は5年前に他界しました。」
「…っ、」
アマネさんは驚いて目を見開いて、小さく「ごめん」と言った。
「構いません。」
両親ともにいないなんて、珍しいことだろうし。
「…一人暮らしなの。」
「はい。中学までは祖父の家で暮らしていたのですが、祖父が老人ホームへ入ることになったので一人でここへ来ました。」
手紙のやり取りはある。祖父の字は達筆過ぎて読むのに苦労するが、いつも僕の状況を伺う内容が書かれている。まあ、いじめられているなんて返したことはないけれど。