color【完結】
鬼塚さんが去って行き、アマネさんと2人になる。
「…そういえばあんたの名前、聞いてなかったわ。」
長い付き合いなのに、変ね、と苦笑していた。僕も、驚いて笑ってしまう。
「僕、アマネさんが苗字だと思ってました。」
「んーん。早川周、っていうの。あんたは?」
そういえば、名乗らなかったのは訳がある。いま思えば、苗字だけでも名乗れば良かったのだけれど。
「早川桜といいます。」
「さくら?」
「はい。女の人みたいで、名前が嫌いで。」
あんまり名乗りたくなったから、言ってなかったんです。と正直に言った。
「あー、そういえば…」
「ん?」
「いじめの発端も、名前でした。女みたいとからかわれたのが最初で。」
嫌なことを思い出してしまった。