【完】幼なじみのあいつ ~亮平の恋愛編~
「…その結婚断って、家を出ちゃダメなのか?やっぱりお金のない生活がイヤで家から出たくないとか?」
俺の言葉に額にあてていた缶を離し、唖然と俺を見る。
そしてグビッとビールを一口飲んでから、口を開いた。
「…そうね。ダメもとで結婚断って、反対されたら家を出ちゃおっかな?そしたら貴方の家に居候してもいい?」
さっきと比べて表情が幾分柔らかくなったその人は、冗談交じりに俺にそんな事を言ってくる。
本当にそんな事をするとは思えないが、ここはきっちり言った方が良いだろう。
「俺、親もとで暮らしてるからダメです」
「え~、いいじゃない?」
「ダメです」
「いいじゃん~」
ニヘッと笑う女の表情からは、本気じゃないのが分かる。
分かるが冗談でも『いいですよ』何て言える人間ではない俺は、真顔でそう言った。
そんな俺の何が面白かったのか、女は俺を指差し笑い始めた。
は?
と、最初は自分を笑う女に気分が悪かったけど、だんだんその人につられて笑ってしまった。
瞬間、女は俺を見て凝視する。
何、驚いたんだ?
緩んだ口元を閉じ、首を傾けながら目の前にいるその人をジッと見た。