はちみつ色の太陽
ねぇ、日下部くん。どうして、誰も本当の俺を見てないなんて言ったの?
本当の俺を見てないって、それはどういうことなの?
それなら、本当の日下部くんは……どこにいるの?
「つーか、再開する気あるなら、さっきみたいなミス止めろよ。今度から、ミスする度にペナルティな?」
「えっ!ペナルティ!?……って、何?」
「お前なぁ……ペナルティはペナルティだよ。今度からミスしたら……そうだな、相手の言うこと、何でも聞く」
「そ……それ、リスクが大き過ぎない?ミスしたら、絶望レベルだよ?」
「それは、お前次第だろ」
だけど臆病な私は、抱いた疑問を日下部くんに投げかけることはできなかった。
―――― “ 本当の俺を知ったら、きっと誰も、俺のことを好きだなんて思わない ”
きっとあれは、夏の暑さにあてられた私が聞いた、空耳だったんだろう。
幻聴……だったんだろう。
そんな風に考えてしまったのはきっと……日下部くんのその言葉に、心の奥にしまった思い出を、私も掘り起こしたくはなかったから。
「それにしても……、今日も暑いな」
高校二年生、私達の夏休みは始まったばかり。
日下部くんと教室に広がる、作業という名の海に飛び込む……貴重な、夏休み。