氷のまなざしの向かう先
その直後にアユが盛大に吹き出した音が。
「アッハハハ、確かに女っぽい名前よねぇ?」
ニヤニヤしながら俺を見るアユに殺意。
そしてそれ以上に名前も知らない目の前の女子に殺意が湧いた。
「だ、だって!なんか響きがあの有名なアニメにでてくる子そっくりだったんだもんっ」
「えぇ?どのアニメよ?」
「決め台詞が『真実はいつも1つ!!』ってやつ。その中の博士のところにいる……」
「あぁ、なるほど?哀しい名前のついてる子ね」
「おぉ、姐さんうまい!!」
それそれ、と楽しげに話が弾む2人と当事者である俺とのこの温度差。
アユは気づいていて無視を決め込んでいるのか、もう片方は完全に俺のことを忘れているが。
無言のまま冷ややかな目線を送っていれば、それに気づいたのかビクリと肩を揺らして俺を見る。
「へ、え…?なんか、機嫌悪い……?」
「初対面で無遠慮にいろいろ言われて不快に思わないやつがいたら会いたいものだな」
「す、すみません……」