氷のまなざしの向かう先
「はいぃ?あ、あげませんよ!?このプリンを手に入れるためにわたしがどんだけがんばったか……!!」
「それはいらない」
第一俺は甘いものをあまり好まない。
欲しいのはそんなものじゃない。
「名前は」
「は?」
何を言われたのか理解できていないのか、ポカンと間抜け面を晒す目の前の女子。
瞳が更に大きく真ん丸になった。
「君の名前は?」
聞きながらゆっくりと笑みを浮かべる。
凄艶に蠱惑的に。
視界の端にいた女子がいたが、俺が見つめるのは目の前のただ1人。
「ゆ、ゆさ……湯佐、真鶴(ゆさ まづる)です」
湯佐 真鶴か……
その名前を心の中で復唱して脳にインプットしておく。
パクパクと口を開き、なんとか言葉を紡いだような湯佐。
今さらのように頬を染める姿に加虐心が膨らむ。
なるほど。こんな素直で純粋な反応をされたら虐めたくもなる。
アユの評価は正しかったな。
「じゃあな、湯佐」
「へ?あぁ、じゃあ、ね?」
首を傾げた湯佐に俺は背中を向けて。
そのときに横目でアユを見ると少し驚いた顔をしていて、俺は密かに笑った。