氷のまなざしの向かう先
その夜、予想通りの人物からの電話に自然と口角が上がった。
「なんだ」
『なんだじゃないわよ。今日のあれ何?』
「言葉の通りだが?」
その人物とは言うまでもなくアユ。
聞きたいのは今日の購買でのことだろう。
勉強をしていた手を止めてペンを置き、ベッドに腰をかける。
「あいつが欲しくなった」
衝動的ではあったものの、その本心は変わらない。
ただただシンプルに、あいつが欲しいだけ。
『何?もしかしてアンタが一目惚れ?』
「かもしれないな」
自分で言っていておかしく思い、くつりと喉の奥で笑う。
そうか、これが世間で言うところの一目惚れか。
恋愛ごとなんて自分には関係ないと思っていたが……人生には何があるかわからないものだ。
『はー、アンタも感情のある人間だったのね』
「なんとでも言え。あいつは貰う」
『先に見つけたのはあたしなんだけど』
「それで俺が諦めるとでも?」
例え先に見つけたのが俺でなくても、最後に選ばれるのが俺であればいい。
これは早いもの勝負じゃない。