氷のまなざしの向かう先
自分でも言っていておかしいと思う。
なぜあんなにも「湯佐 真鶴」という人間に執着じみたものを感じるのだろう。
言うまでもなく、会ったのは初めてだし色恋に興味があったわけでもない。
むしろ女子に対しては面倒としか思っていなかったし、恋愛は嫌な印象しか持ち合わせていなかった。
にも関わらずあんなにも欲しいと思った。
一目見て、一瞬で。
自分のものにしたいと思った。
『普段淡白な玲にしては珍しいぐらいの執着ね?』
「そうだな」
同じことを電話の相手も思ったらしい。
思わずくつくつと微かに笑いが出る。
『ま、せいぜい頑張れば?あたしはあたしで玲がどう動くか、あの子がどう反応するかをおかずに楽しむわ』
ふふふ、と受話器越しに感じる笑い声に、きっとアユは加虐心をふんだんに表面に出した顔をしているのだろうと思った。
そのまま電話を切り、テーブルの上に置く。