氷のまなざしの向かう先
ふと脳裏に浮かんだ湯佐の姿。
小動物のように小さな体を震わせて、怯えの色と涙を浮かべた大きな瞳で俺を見て。
曇りのない純な瞳は窺うように俺を映す。
そう、その真っ直ぐな純粋な瞳が、視線が欲しい。
誰にもそれを向けるな、俺だけを映せ。
どんな感情もその瞳を通してすべて、俺だけに向けろ。
不条理で利己的で自己中心的なこの感情が恋なのか。
だとしたら恋とはなんて面倒なのだろう。
だが仕方ない。欲しいと思ってしまったのだから。
「さあ、狩りの始まりだ」
獲物だとまだ認識していない哀れな子栗鼠。
思う存分に逃げればいい。
そして気づけ。お前は絶対に逃げきれないことを。
「お前は、俺のものだ……」
呟きとともに浮かべた笑顔に、見えていないにも関わらずこれからの恐怖を感じたのか、当の本人である湯佐 真鶴が寒気を覚えたらしいが俺が気づくはずもなかった。