氷のまなざしの向かう先
その言葉に顔を向けると、アユは整った顔に嗜虐と加虐、それに愉悦を混ぜたような表情を浮かべていた。
過去見た中で1番とも言えるぐらい輝いた顔に不信感が募る。
これは嫌な予感しかしない。
但しその『嫌なこと』の被害を被(こうむ)るのは間違いなくアユの言うところの「すっごくそそられる子」だ。
いったい誰なんだという興味と、相手に対しての哀れみが浮かんだ。
かと言って代わってやろうという感情は欠片も持ち合わせていないが。
「あ、言っておくけど同じクラスの子よ?」
ということは俺ともクラスメートというわけか。
女子に興味はなかったし、アユとも特に話すことはなかったため全然気にしていなかった。
別れ際に、大体いつもその子といるから、と上機嫌で言ったアユに俺はその「そそられる子」がどんな子なのかと帰り道に考えていたのだった。